マーケティングの世界で注目されている心理学用語のひとつに「バーナム効果」というものがあります。バーナム効果を使った手法は、もともと占い師や営業マンなどの間で頻繁に活用されてきました。ただ、最近ではマーケティング戦略、とくにWEBマーケティングでも非常に有効と考えられていて、その心理学的効果に基づいた記事やコンテンツを作るメディアも増えてきているのが現状です。今回はそんな「バーナム効果」について、説明していきます。

「バーナム効果」とは

「バーナム効果」とは、誰にでも当てはまるようなフレーズにもかかわらず、まるで自分に当てはまっているかのように思ってしまう心理的現象のことをいいます。バーナム効果でよく例に挙げられるのが「占い」です。たとえば実際に大手の占いサイトにあった一文を読んでみてください。

「今日のA型の人の運勢は良好。あなたに周囲の期待が集まるので思い通りにことをすすめましょう。ただ、期待に応えようとし過ぎて疲れを感じてしまうことも。そんなときはラベンダーの香りがおすすめ」

冷静になって読んでみると、かなりの人に当てはまるような内容ではないでしょうか。しかもその中身は無難で、とくに目新しいことが書いてあるわけではありません。しかし、これを読んだA型の人が、たまたま大きな仕事やイベントが控えていたとしたらどうでしょう。あるいは、少し仕事や学校で張り切りすぎてちょうど疲れているときにこれを読んだら、「自分のことが書かれている」と思ってしまうのではないでしょうか。

こうした効果を意図的に狙うのが「バーナム効果」を使った手法です。当たりさわりの内容でしかないこの文章は、実は当たりさわりのないように意図して作られているというわけです。このように説明すると、まるで人をだましているかのような印象を受けますが、短い文章やフレーズで人の興味を引き付けるための手法としては、非常に優れた心理的テクニックといえます。

そして、この「バーナム効果」を使うことで大きな効果を得ることのできるのが、広告文やキャッチコピーです。商品を売りたいというときに、読者に対して「この商品は自分のために必要なものだ」と思わせることができたら、これほど効果的なものはありません。したがって、広告文やキャッチコピーでは、意図的に「バーナム効果」を狙ったフレーズ、コピー文を活用することが多いのです。

「バーナム効果」を生むための4つの基本テクニック

「バーナム効果」を広告文やキャッチコピーで活用するためには主に4つの基本パターンを押さえておく必要があります。

パーソナルなメッセージであること

まず1つめは「あなた」だけに向けているという「メッセージ性」です。これがバーナム効果を活用する上でもっとも大事なところで、「あなた」だけに向けたメッセージといいながら、実は人が誰しも抱えている願望、悩みなどをピンポイントで抽出するところに特徴があります。そして、ここで大切なのは、そういったメッセージを「あなただけに」といったように、個別に向けられた内容に仕立てあげるという点です。例えば、「どうしても痩せられない皆さんに、○○がおすすめ」と書くよりは「どうしても痩せられないあなたに」とした方が、より訴求力があるということです。

発信者の権威性

2つめのポイントは「発信者の権威性」です。発信元に権威がある方がバーナム効果は生まれやすいとされています。一例を挙げてみると、よく健康食品などで「○○大学教授監修」や「世界的権威のある○○賞を受賞した」といったフレーズを目にするでしょう。こうしたフレーズが「ご近所で評判の」「一般学生の考えた」のようなコピー文だった場合と比較して想像してみましょう。発信元に権威がある方が「これだけ評価を得ているのなら間違いない」「○○先生の言うことなら信用できるかな」といった感じで、内容を信じやすくなるのではないでしょうか。これが「発信者の権威性」です。

ポジティブな内容であること

3つめは「ポジティブな内容」であることです。なぜポジティブな方がいいのかというと、人はネガティブな内容だと、「それは自分のことではない」「自分には当てはまらないからよかった」というように考える傾向があるからです。これでは多くの人に当てはまる内容を盛り込む「バーナム効果」とは真逆です。積極的に「これは自分に当てはまる内容だ」と思わせなければいけないので、心理的防衛を生みやすい「ネガティブフレーズ」は極力避けるべきというわけです。基本的にポジティブな内容で文章を作ることが、「バーナム効果」を活用したキャッチコピーの作り方の基本となります。

受け取り側の都合が良いように受け取れる言い回し

4つめは「どちらとも取れる表現」です。「バーナム効果」のキモは、「誰にでも当てはまる内容を、個別に向けて伝える」ということにあります。先ほど取り上げた血液型占いでも「周囲の期待が集まるので思い通りにことが進みます」「周囲の期待から疲れを感じてしまうこともあります」など、元気に頑張っている人、仕事で疲れを感じている人のどちらにもあてはまるような文章の流れで作られていることがわかるでしょう。

このような文章は普段の生活でもよく目にします。例えば、「あなたは普段の生活ではどちらかというと社交的ですが、本当は内向的な性格です」、あるいは「あなたは目的に向かってやる気を出せば必ず成果をあげますが、普段は地道な作業をさぼりがちです」といった文章パターンです。要するに文章では結局「社交的な人なのか内向的なのか」「頑張り屋なのか怠け者なのか」を明言せず、どちらの人にも当てはまるような内容になっているのです。しかし、こういった文章の方が「自分のことだ」と感じる人が多いはず。なぜなら、多くの人は「社交的な面と内向的な面」というように、一面的ではない両方の性質をかかえているものだからです。

このように「ポジティブ」な内容や「どちらともとれる表現」を使うのは、読む人に「自分に当てはまっている」と思わせるための基本テクニックといえるでしょう。人間は自分に都合のいい情報だけを取り入れやすい性質があるので、いかに読者の多くが当てはまるキャッチコピーを作るかが「バーナム効果」をうまく活用するうえで重要なのです。

「バーナム効果」を簡単にキャッチコピーに
活用する事例をいくつか紹介

ここで、「バーナム効果」を簡単に活用する方法を事例とともに紹介します。2つの基本ポイントを押さえておけば、どんな場合でもバーナム効果を生みやすいキャッチフレーズを考え出すことができます。

1つめのポイントは「あなただけに」という個別的なメッセージ性を強める方法です。例えば「やせられないあなたに朗報! 簡単に実践できるスクワットでスッキリボディに」というキャッチフレーズがあるとしましょう。「やせられないあなた」という文言を少し変えて、「何をやってもやせられないあなたに」というふうにしてみます。すると、「何をやっても」の一言を付け加えるだけで「やせられない」ことに悩んでいる人をよりピンポイントで訴求できるのです。こうした「強調フレーズ」を追加するのは非常にインスタントなテクニックです。

2つめは「この時期、肌荒れが気になりませんか?」という、よく見かけるキャッチフレーズ。よくありそうな広告文とですが、少しアレンジします。たとえば、「肌荒れ」を「肌の乾燥」としてみる。「肌の乾燥」には「肌荒れ」も含まれますし、この他にも肌のたるみやくすみ、シワやシミで悩んでいる人も含まれてきます。つまり、「肌の乾燥」というフレーズなら当てはまる人は多くなり、「肌荒れ」や「肌のシミ」というフレーズにすると、より限定された人へ向けたメッセージになるのです。ワードの選択によって、訴求するターゲットの母数がかなり変わってくるのです。

このように、個別へのメッセージを強調するフレーズ、そして訴求するターゲット層にあてはまるワードの選択、この2つのテクニックを応用すれば、より効果的なキャッチコピーを作ることができるでしょう。

「バーナム効果」を活用するときの注意点

「バーナム効果」を活用するときに注意しておきたい点もいくつかあります。

1つめは「ターゲットを絞り込み過ぎない」ということです。たとえば「やせられないあなたに」というフレーズを改良しようとして「炭水化物ダイエットでやせられないあなたに」と変えてしまうと、訴求するターゲット層が限定され過ぎてしまいます。あえてターゲットを絞ることが目的ならいいですが、多くのやせたいと思っている人に訴求したい場合にはあまり効果的とは言えないでしょう。この場合はターゲットを限定するワードではなく、あえて幅をもたせることです。

2つめは「あおり過ぎないこと」です。「まだそんな面倒なダイエットやってるの?」といったキャッチコピーが刺さる人もいますが、その反動もあります。あえて反動を起こさせることも戦略としてはありです。でも、一度炎上したり、煽りが強いイメージがつくと後からそっちに印象が引っ張られてしまいます。この「引っ張り」はわりと後を引きますので、意図的な狙いがあるわけではないなら、不必要に煽らないほうがいいでしょう。

最後に「権威性」の振りかざし過ぎも注意すべきポイントです。権威性といっても、たいした権威は必要ないのです。というより、権威と言うとどうしてもその人の肩書や実績を浮かべがちですが、そういう話でもないのです。事業の主体が怪しくないか、信用できるかどうか、というのはキャッチコピー云々以前に様々な細かいところから滲み出るものです。例えば、売れているECサイトというのは何となく空気感で伝わるものです。逆に、閑古鳥が鳴いているサイトはいくら装飾をつけまくってもわかるものです。なので、肩書や受賞歴などをたくさん盛り込めばいいわけではなく、やはりそこは運営者の姿勢がよく反映されるところだと思います。要するに、何らかの受賞歴などをふんだんに盛り込んだLPは「下品」に映るということです。

ただし、バーナム効果なんて
プチテクニックでしかない

ここまで「バーナム効果」を解説しておいてなんですが、この心理をマーケティングや購買意欲に活用することのメリットはそこまで大きくないということです。なぜなら、「バーナム効果」が占い師によくあるような「Yes」を取っていく手法としてはある程度通用するものですが、実際に購買までつなげるには本当に「Yes」であることが重要だからです。

例えば、「あなたの会社のホームページ、作ったまま放置になってませんか?」というコピーがあったとして、それで「Yes」がとれたとする。ここまではいい。でも、最終的に購買につなげていくには、あなたが提供する商品やサービスがユーザーの悩みや問題を解決するものでなければいけません。それって、結局は商品の魅力や価値に最終的には委ねるということなので、こうした心理的現象をコピーライティングに活用することは悪いとまでは言いませんが、しょせんは小手先のテクニックでしかないということです。

占い師でも同じです。小手先のテクニックで「Yes」がとれて信用を得たとしても、何回もリピートしてくれるとは限りません。TV番組でもおなじみの占い師を見ていると、普通の人がテクニックで人を引きつけているようには見えませんよね。人としての深みがあって、もっと話を聞いてもらいたいという心理が働いているからこそ、何度も同じ占い師に足を運ぶのです。もちろん、完全に洗脳されてしまっている人もいるかもしれませんが、それは本流ではありません。

結局の所、お金を頂く対価としてどんな価値を提供するかです。長々と「バーナム効果」のマーケティングへの活用の話を書きましたが、こういう手法もあるんだということは知っておいて損はないかもしれませんね。